日本海海戦の故事は既に忘れられてしまったか

このページには、コミックマーケット８８（2015年夏）に出展した際に、当サークルのスペースを訪れていただいた皆さんに向けて配布したペーパーの内容を掲載しています。

非常に驚きました。マレーシアで7月29日開催のIOC理事会にて新国立競技場の建設計画白紙を説明する予定の、東京オリンピック組織委員会 森喜朗会長が、会場への道で日本人記者から心境を聞かれた際のニュースにです。森会長が「天気晴朗なれども」との言葉を発し「その続きは」と謎かけをしたのに対して、記者は答えられませんでした。

もちろん「軍師・参謀」を志す人であれば、秋山真之（あきやまさねゆき）参謀が日本海海戦の開戦直前に大本営に向けた打電「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊はただちに出動これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども波高し」はよくご存じと思います。

小冊子シリーズ「軍師・参謀を志す人のために」第21巻で検討したように、たとえ話やキャッチフレーズのたぐいを用いる手法により、それを聞く者をして、聞いた瞬間になんとなく「わかった」ような気にさせて、ひと言では説明しづらい複雑な状況や感情などの諸要素を、ごく簡単に端折（はしょ）って伝える（さらには、相手が頭の中に形成するイメージを、こちらの思うように誘導する）ことが可能となります。

しかしこのような技巧は、そのたとえ話等に関する知識を相手が持っていてこそ、効果を上げ得るものでした。現代日本の若い記者たちは、森氏が引用した秋山による一文や、この背景にある、明治日本の運命を背負い強大なロシア・バルチック艦隊との決戦へ赴く連合艦隊将兵らの緊張、覚悟といった情報をお持ちではなかったようです。

もしかすると、現在「軍師・参謀」的には常識と言える「三顧の礼」といった句も、「サンコのレイ？…３個の幽霊っスか？」などと問い返される日も、遠くないのかもしれません。

C88 2015年 8月14日（金） 東５ホール 「ヒ」ブロック 39b
軍師・参謀を志す人のために　穀城山中樵客（こくじょうさんちゅうの しょうかく）

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TC/CO/0030 (15-0003)

[2015-09-19]

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