軍師・参謀にとって「自己演出の技術」の必要性

軍師・参謀は「計謀立案の技術」だけでよいのか

軍師・参謀の基本的な役割は、指導者（リーダー）やその指導者が率いている組織のために策や謀（はかりごと）を立案し、そしてこの策を実施するための計画を立てるということでしょう。

このような役割こそが、軍師・参謀が果たすことを求められる最も重要なものであり、軍師・参謀はこれに必要な「計謀立案」の技術・能力が高くなくてはなりません。

しかし、だからと言って、「軍師・参謀とは、計謀立案に関する技術・能力が全てである」などと考えてはならないのではないかと思います。

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軍師・参謀への信頼がなければ策は行えない

軍師・参謀が自分の立案した策を実施しようというときには、まず指導者（リーダー）やこの指導者が率いている組織の中の人たちから、この策について理解を得ることが必要です。そして、自分の立てた策の中身について理解を得ることと同じくらいに重要なのが、この策を立案した自分自身のことを指導者や組織の中の人たちから十分に信頼してもらえるようになっておくことだと思います。

例えば、スポーツの団体戦や企業間での商品シェア奪い合いなどのように、チームや会社が勝敗を賭けてぶつかり合いを行っている場面にあって、このチームや企業における軍師・参謀役の人が勝ちを取りに行くための策を立てたとします。この時、この軍師・参謀役の人がチームメンバーや営業セクションの社員などに対して、「自分が立てた策で行けば勝てる」ということを十分説明して納得を得ようと努力することは、もちろん重要です。

しかし、それよりもまず先にこの軍師・参謀役の人がやっておかなければならないことは、自分自身に対する信頼をチームメンバーたちから得ておくということなのではないかと思います。それは、そうでなければこの策に基づく作戦を円滑に実施することができず、折角の策も生きてこないのではないかと考えるからです。もしチームメンバーたちが軍師・参謀役の人間について未だ十分に信頼が持てていないような状態にあれば、この軍師・参謀役が提案してくるいろいろな策への信頼、安心感も生まれ得ないのではないでしょうか。

何らかの策を円滑に実施していくためには、この策への安心感というのは必要不可欠なものだと思います。戦争を行おうというのであれば、軍師・参謀は具体的な戦闘作戦に関する策を施す前に、自軍の兵士たちにこの作戦を立てている自分への信頼感と策への安心感を与えるための手をまず打っておくことが必要なのではないでしょうか。

さらに、上記の例で言えば、状況によっては策の中身自体の良し悪しよりも、その策を提案している軍師・参謀役に対してチームメンバーが抱いているイメージの良し悪しといったものの方に影響されて、この策に対するチームメンバーからの賛否が形成されてしまうということもあり得ると思います。どんなに良い策でも、これを提案してきた軍師・参謀その人が皆からどこか信頼し難い印象を持たれているとしたら、いかなる指導者（リーダー）といえどもこの軍師・参謀の策を安心して採用することはできないでしょう。

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軍師・参謀にとって「自己演出の技術」は重要

軍師・参謀の役割を十分に果たせるかどうかは、指導者やチームの構成員たちに『この軍師・参謀は信頼できる人だ』という印象を与えることができるか否か、そしてこれらの人たちから『この人の立てる策なら大丈夫だ』という評判を得ることができるか否かということにかかってくるのではないかと思います。平たく言えば、「世間の目」があなたをどのように見ているのか、軍師・参謀として信頼するにふさわしいと考えてくれているかどうか、が重要なのではないかということです。

これには、まず、軍師・参謀として信頼するに足る実績を上げておくことがもちろん必要であり、このことは最初に掲げた「計謀立案の技術」を磨き、成果を出すということにほかなりません。軍師・参謀は、この「計謀立案の技術」が優れていなければ問題になりません。

そして、この「計謀立案の技術」にプラスして、「自己演出の技術」というものが軍師・参謀には必要になってくるのではないでしょうか。

「自己演出の技術」、つまり、軍師・参謀が自分自身のことを人にいかなるかたちで見せるのか、そして、どのようにすれば上手に自分のよいイメージを周囲の人に持たせることができるのかということに関する技術は、軍師・参謀にとって「計謀立案の技術」と同じくらいに重要なものなのではないかと思うのです。

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信頼して任せられる軍師・参謀であることを示す手法

軍師・参謀を志す人は、自分の特長を生かしつつ、身ぶりやものの言い方などに「信頼できる軍師・参謀」らしい統一感ある工夫をこらし、そのような自分を人に見せるという技術についても研究習得することが必要なのではないかと思います。

言い換えれば、最終的に周囲の人たちから、『この人は、安心して任せることのできる軍師・参謀である』とか、『この軍師・参謀の立てる策なら大丈夫だ』などと考えてもらえるようにするにはどのようにしたらいいのかということを常に考えつつ、自分自身の「軍師・参謀」の型（かた）を自らの態度の中に一貫性を持たせて表現するための手法を検討することが必要なのではないだろうかということです。

このページから始まる考察分野「自己演出」では、軍師・参謀の役割を務めようとする人が自分自身の姿や振る舞いを演出していくとしたら、どのようなことを基本にしていくのがよいのか、また、どんな技術・手法が考えられるだろうかということを検討してみたいと考えています。

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　　　 なお、指導者（リーダー）として組織を統治運営する立場の者が気をつけるべき立ち居振る舞いや、組織を指揮する際にとるべき挙措などに関する具体的な技術・手法については、それぞれ「組織運営」や「指揮決断」の考察項目の中で検討することにします。

CA/BE/0010 (03-0026)

[2003-07-15]