＊１：マスコミによる報道の誤りの原因について
この考察の本文では、単一情報源から得られた情報そのものの誤りによる事実誤認というケースのみを取り上げました。しかし、マスコミによる誤った報道の原因はこれだけではありません。この他にも、複数情報源から得られた情報の選択・ウェイトの置き方の失敗によるものや、取材した情報（人の発言など）の意味の解釈を間違うことによるものなど、いくつもあります。
ところで、私の部下が偶然ある事件の第一発見者となって、テレビリポーターの押し掛け取材を受けたことがあります。その部下の話によるとこの時取材に来たリポーターは、事件が起こった時の状況について一つのストーリーをはじめから自分の頭の中で組み立てていて、このストーリーに基づいて質問をし、また、そのストーリーの流れに合った回答を求めていた感じがしたということです。
様々な社会的事件がテレビのニュースやワイドショーで報じられる時、キャスターやリポーターがまるで現場を見てきたようなものの言い方をすることがありますが、実際には丁寧に現場や関係者を取材して、事実をきちんと確認してきているとは限りません。また、現実の世の中では、「事実」というのはかなり複雑なもののはずです。事件が起きた当日や翌日という短い時間のうちに全ての事実が明らかになることの方が少ないでしょう。しかし、テレビを見ている大多数の視聴者は、キャスターやリポーターが事件発生のその日のうちに提供する「事実」の断片を、これが全てであるかのごとくに受けとめてしまっているのではないでしょうか。
なお、情報を提供したり報道したりする側の者が、情報を受け取る側の認識を操作してやろうとして、提供する情報に意図的（恣意的）に様々な小細工をすることだってあり得るということも忘れてはならないと思います。